橋本病
橋本病

甲状腺は「甲状腺ホルモン」という物質を出しています。甲状腺ホルモンは人間の体内で、アクセルを踏む役割をしています。甲状腺ホルモンが放出されると体は活発に動き、逆に体を休ませたい時はホルモンの放出が控えめになってアクセルを緩めます。
橋本病は、甲状腺ホルモンの分泌量が減っていき、やがては全く出せなくなってしまう疾患です。人間の体には細菌などの外敵から守る免疫細胞があるのですが、この免疫細胞が甲状腺を破壊するように間違って設定されてしまい、甲状腺がどんどん壊されてしまう病気です。
一度できてしまった免疫細胞は取り除くことができないため、橋本病の抗体ができてしまうと、そのうち甲状腺ホルモンが足りなくなるくらい甲状腺が破壊されてしまい、甲状腺機能低下症となってしまいます。
一方で進行が緩やかなため、橋本病の抗体を持っていても甲状腺の機能が十分保たれたまま一生を過ごす方も多いです。橋本病の抗体は女性の10〜20%、男性の3〜7%程度が持っていると言われています。
その中で甲状腺機能低下症になり、治療が必要な状態となっているのは女性の3〜5%、男性の0.5〜1%程度とされています。
甲状腺機能低下症の症状は、体がすごく興奮状態になる甲状腺機能亢進症と異なり、体が動かなくなる状態になっていきます。そのため症状を自覚しにくいです。
車に例えると、24時間アクセル全開で一般道を常に120km/hで走る状態になるのが甲状腺機能亢進症ですが、甲状腺機能低下症、特に橋本病はゆっくりと機能が失われていきます。それまで50km/hで走っていた車が、ゆっくりとアクセルの踏みを弱くして45km/hに減速しても、車窓から見える光景や体感速度は全く変わらないと思います。それが40km/h、35km/hときて、20km/h台にスピードが落ち車が止まりかけたら流石に気づくと思いますが、人体で言えばこの状態は体の機能がほぼ動いていない、寝たきりになったり心不全になったりした状態なので、よほど悪くならないと本人も周りも気づけないことも多いのが特徴です。
典型的な症状としては、アクセルの踏みが弱くなると甲状腺機能亢進症の逆の状態になるため、
などの自覚症状が出ますが、これは加齢や疲労のせいなどでも非常によく起こる症状なので、病気かもと疑われないことが多いのです。
血液検査で甲状腺ホルモンの分泌量と、橋本病の原因となる免疫細胞(抗体)の有無について調べます。橋本病の抗体が陽性となれば橋本病と確定診断されます。また、甲状腺腫大も併発していることが多いことや、稀に橋本病がある甲状腺に悪性リンパ腫を発症してしまうこともあるため、甲状腺超音波検査も行います。
治療としては、甲状腺ホルモンの内服薬を一生飲む必要があります。甲状腺を破壊する抗体ができてしまう橋本病の場合も、感染や薬の副作用で破壊された場合も、一度破壊されてしまった甲状腺の機能を蘇らせることは現代医学ではできません。そのため、原因がなんであれ甲状腺機能低下症と診断されますと、内服薬による補充療法をずっと行わないといけません。
上で述べたように自覚症状がほぼない病気ですが、体全体の機能が緩やかに止まっていく状態にあるため、補充療法を行わなければ致死的な心不全などに至ってしまいます。逆に言えば補充療法をしていれば他の健康な人と同じホルモン状態になるため、寿命や健康に影響を与えることはありません。
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