肥満症
肥満症

体重の判定は、身長と体重の割合で計算されるBMIという数値を元に判断します。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
標準体重という指標があり、これはBMIを用いた「統計学的に一番健康でいられる体重」のことを示します。体重の多い少ないだけだと身長によって判断が変わってくるため、体重と身長の比で判定するのです。
BMI = 22 の時の体重が標準体重になり、下の表のように判定を行います。

肥満症は一次性肥満と二次性肥満に分かれます。
一次性肥満
肥満の原因が明らかでなく、過食や運動不足など生活習慣との関連が強いもの。治療は食事療法と運動療法が基本となる。
二次性肥満
これらの肥満となる原因があり、それのせいで肥満になっているもの。治療は原因の除去(原因疾患の治療や薬剤の変更)となる。
この2つを鑑別することは非常に重要で、病気が原因で太っている二次性肥満の場合は食事や運動だけでは痩せられないだけでなく、肥満症以外の疾患も発症してくるため、根治的治療が必要となってきます。
WHO(世界保健機構)によると、2021年の1年間で肥満が原因で発症した心血管疾患、糖尿病、がん、神経障害、慢性呼吸器疾患、消化器疾患などの肥満関連疾患による死亡者数は、推定370万人に及ぶと報告されています。
肥満は死亡率の上昇と関連しており、肥満がない人とある人を比べると、平均余命は5〜10年短くなると言われており、特に重度の肥満症の人は肥満がない人に比べ、明らかに寿命の短縮傾向が認められています。そのため肥満があると診断された時点で早期から指導を行い、減量に向けてプランの作成や意識改革を行うことが重要なのです。
では、具体的には、肥満があるとどれくらい寿命に影響を与えるのでしょう?アメリカ合衆国やヨーロッパでは日本よりも重度の肥満症患者が多く、社会問題になっています。アメリカ合衆国のハーバード公衆衛生大学院とイギリスのケンブリッジ大学が中心となった研究チームが、32カ国・300以上の医療機関において、1060万人にも及ぶ超大規模疫学調査を行いました。最終的に条件に合致した395万人以上を13.7年間追跡調査をして、肥満症と死亡リスクの関係を調べています。
これによると、一番健康にいいとされているのが、BMI 22.5〜25 の「標準体重」であり、死亡リスクがもっとも低いという研究結果が得られています。BMIが上がると死亡リスクも上昇し、左下の表に示す通り、BMIが増えれば増えるほど、死亡リスクは加速的に上昇しているのです。

この肥満症が原因で健康被害が出てしまう理由として、メタボリックドミノという概念が言われています。

これは 「動脈障害のドミノ倒しの出発点は、生活習慣から来る肥満である」という考え方です。メタボリックシンドロームを放置することで肥満症になったり、あるいは肥満症がなくても疾患発症リスクが上がっていくため、できるだけ早期のうちに発見してドミノ倒しが倒れることを防ごう、という目標を表したものになっています。
逆に、減量すれば全死亡率も改善します。平均BMIが35の患者群が5.5 kg 減量することで、全死因死亡率が15%低下したことが示された研究結果もあります。他にも減量することで糖尿病や高血圧の改善が認められる研究結果は複数存在しておりますので、減量で寿命の延長が見込めることは確かであると思われます。
このように肥満は健康に直接影響を与えかねないため、太らずに済むのでしたら太らない方がいいですし、肥満になっていても健康被害が積み重なる前に減量することが望ましいです。
当院での肥満症治療は下記のような流れで行います。
肥満症の治療は食事療法、運動療法、薬物療法の3つがあり、どれも重要です。食事療法については栄養士による栄養指導を行いつつ、適切な摂取カロリーと食事成分のバランスが取れた献立の相談を行います。
運動療法は、厚生労働省が出している『健康日本21(第三次)』を元に目標を策定します。これは「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」というビジョンのもと、51項目の目標が設定されたものです。この中で成人の運動目標は次のように設定されています。
| 20〜64歳 | 男性:8000 歩 | 女性:8000 歩 |
|---|---|---|
| 65歳以上 | 男性:6000 歩 | 女性:6000 歩 |
これを、
ことを目標づけています。これはあくまでも健康を目指す上でのスタートラインですので、すでに肥満があってダイエットを行うのであれば、もう少し頻度を増やすことが望ましい場合もあります。これらを総合して各個人に応じた運動目標を作っていきます。
肥満症の薬物療法は大きく分けて2種類あります。
肥満症に対しては保険診療がありません。糖尿病、慢性心不全、慢性腎不全に対する治療薬です。尿から糖を捨てることで減量を図ります。
2型糖尿病の治療薬です。2型糖尿病がない人には使用できません。消化管に働きかけてお腹がいっぱいである感じにさせたり、食欲中枢に働きかけて食欲を抑えたり味覚を変えたりすることで食欲の低下を図ります。
当院では日本糖尿病学会の出している治療指針に従い、マンジャロやリベルサスなどのGLP-1製剤の処方を行います。
GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解
https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=191
肥満は体脂肪が過剰に蓄積した状態、肥満症は医学的に減量治療が必要と判断される病気です。肥満に関連する健康障害がある場合や、内臓脂肪が蓄積し健康障害のリスクが高い場合などに診断されます。体重が多いことだけで決まるものではありません。当院では診察と検査をもとに、見た目ではなく健康を守るための治療が必要かどうかを判断します。
BMIという指標が判断の出発点になります。BMIは体重(kg)を身長(m)で2回割って求める数値で、身長の違いによる影響を除いて体格を評価できます。ただしBMIの数値だけでは決まりません。同じBMIでも、血糖値や血圧、コレステロールなどに異常があるかどうかで、治療が必要な段階かどうかは変わります。健康診断で肥満やメタボリックシンドロームを指摘された方、体重が増えてきて他の数値にも変化が出ている方は、BMIの値にかかわらず一度ご相談ください。「痩せたいから」ではなく「数値が気になるから」という理由での受診で構いません。
ホルモンの病気や薬の影響が体重増加に関わる場合があります。二次性肥満と呼ばれ、生活習慣の改善に加えて原因への対応が必要になることがあります。当院では初診時に病歴を伺い、採血などで原因を調べる方針です。採血だけですべての原因が確定するわけではなく、必要に応じて追加検査を検討します。服用中の薬は自己判断で中止せず、お薬手帳などを持参してください。
一定の条件を満たす肥満症では、保険診療で使える薬があります。ただし、薬ごとに対象となる体格・健康障害や、治療歴、処方する施設の要件などが異なり、どの医療機関でも処方できるわけではありません。当院の現行案内では、GLP-1製剤などの処方を日本糖尿病学会などの各学会の声明に基づき処方を行います。食事・運動療法で行うのか、薬物療法も行うのかといった治療方針については、診察・検査の結果を踏まえてご案内します。
当院では、美容や痩身を目的とした自費でのGLP-1製剤の処方は行っておりません。減量をご希望の場合は、まず健康障害の有無や体の状態を確認し、肥満による肥満関連合併症(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群など)の有無によって薬物療法を行うかどうかが変わります。糖尿病治療薬と肥満症治療薬では適応が異なります。薬が必要か、当院で対応できるかは個別に判断します。
これまで減量が続かなかった方もご相談ください。体重には生活環境、体質、病気、薬など複数の要因が関わるため、意志の強さだけで捉える必要はありません。当院では経過を伺い、検査結果を踏まえて食事・運動などの計画を考えます。体重だけでなく血圧や血糖などの健康状態も見ながら、無理なく続けられる目標を相談します。
現在の食事内容や生活時間を伺い、摂取エネルギーや栄養バランスを踏まえて改善点を相談します。当院の現行案内では、初診時の病歴確認・採血後、次回に結果を説明し、時間が合えば栄養指導を行う流れです。実施日や予約方法は事前にご確認ください。運動も、持病や体力に応じて無理のない内容から検討します。
関係があります。体重の増加によって首まわりに脂肪がつくと、寝ている間に空気の通り道が狭くなり、いびきや、呼吸が一時的に止まる睡眠時無呼吸につながることがあります。日中の強い眠気、起床時の頭痛、夜間に何度も目が覚めるといった症状がある場合は、検査で確認しておくことをおすすめします。睡眠時無呼吸を放置すると、高血圧や心臓の病気のリスクが上がるほか、睡眠の質が下がることで日常生活にも影響が出ます。減量によって改善が期待できる一方、まず呼吸の状態を整えることで生活の質が上がり、減量に取り組みやすくなる場合もあります。肥満と睡眠時無呼吸はどちらも当院で診療していますので、あわせてご相談ください。
体脂肪量、筋肉量、体水分量などを推定し、体重の内訳を見る手がかりになります。測定値は食事や水分の状態などの影響も受けるため、数値だけで診断や治療効果を決めるものではありません。当院にはInBodyを備えており、診察や他の検査と合わせて経過を確認します。測定の対象やタイミングは診察時にご案内します。
健診結果を持参してご相談ください。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積に血圧・血糖・脂質の異常が重なる状態です。心臓や血管の病気のリスクを考え、早めに生活習慣を見直すことが大切です。必ず一定の順番で病気が進むわけではありません。当院では各項目を合わせて確認し、生活改善や治療の必要性を判断します。

監修者
松尾 悠志(まつお ゆうじ)
松尾内科・糖尿病・内分泌クリニック 院長
専門領域:糖尿病、甲状腺疾患、内分泌疾患、肥満症、生活習慣病
藤田保健衛生大学(現:藤田医科大学)医学部医学科を卒業。藤田医科大学病院、豊田厚生病院、岡崎医療センターでの診療経験を経て、松尾内科・糖尿病・内分泌クリニックを開院しました。糖尿病・甲状腺疾患・内分泌疾患を中心に、将来の健康を見据えた予防医療に取り組んでいます。
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