バセドウ病
バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを分泌させる免疫細胞ができてしまうことで発症する病気です。甲状腺ホルモンは人間のアクセルを踏む役割をしているため、以下のような症状が出てしまいます。
頻脈や動悸
夜寝ている時も走っているような状態になってしまい、心臓がバクバクします。
発汗過多
涼しい時や夜寝ている時もすごく汗をかく。
体重減少
24時間全力で生きるため、食べても食べても痩せてしまう。
手の震え
手をぴたりと止めている時にすごく震えてしまう。文字を書こうとしたり、包丁で切ろうとしたりする時に気づくことが多い。
甲状腺腫大
甲状腺が抗体に刺激され続けることで甲状腺全体が大きくなる。
眼球突出
甲状腺を刺激する抗体が眼球を動かす筋肉を刺激して炎症を起こすことで、筋肉が肥大して頭蓋骨の中に眼球が収まりきらなくなって目が飛び出てくる。
診断は血液検査がメインです。甲状腺機能亢進症の症状があり、採血で甲状腺ホルモンがたくさん分泌されている機能亢進症状態で、かつバセドウ病の原因抗体である抗TSH受容体抗体(TRAb)や甲状腺刺激抗体(TSAb)が陽性となれば、『確からしいバセドウ病』と診断されます。
治療方法は3つあります。
これはそれぞれメリットとデメリットがあります。加えて、3つに共通するものとして、禁煙と症状が強い時の安静があります。どの治療を選ぶにしても、喫煙は甲状腺機能亢進症を悪化させますし、治療が奏功するまでの間は動悸が続くことで不整脈のリスクが高くなりますので、安全のために運動を控える必要があります。
日本で一番多く選ばれている治療方法です。甲状腺ホルモンを出させる抗体を抑え込む内服薬を飲み、病状を鎮静化させます。
一般的には最初は3錠の抗甲状腺薬から始め、採血で甲状腺ホルモンの値を見ながら1錠ずつゆっくりと減らしていきます。薬を減らしていく中で再発してしまうと、薬をそれ以上減らせないということになるため、その場合は一生薬が必要です。
データによってばらつきはありますが、
ことが研究で分かっています。長期間の内服治療は必要となりますが、薬を完全にやめられ、完治する可能性があることが最大のメリットです。
内服薬はどんな薬であっても副作用がありますが、バセドウ病の薬は甲状腺を刺激する免疫細胞を抑える薬であり、副作用は起こりやすいです。
皮膚症状
約 6 %程度、軽微なものを入れると約24%に発症。
肝機能障害
約 4 %に発症。バセドウ病自体も肝障害を起こす。
無顆粒球症
約 0.1 %強に発症。細菌などから体を守る白血球が作れなくなる。
新生児奇形
内服している状態で妊娠すると、胎児に奇形が出現することがある。
中でも無顆粒球症は危険な副作用で、薬を止めれば2週間ほどで再び作られるようになりますが、その間は体の抵抗力が完全に無くなるため、病院に緊急入院して点滴からの抗生剤治療が必須です。この副作用は内服開始から3ヶ月以内に大半が起こるため、内服開始から3ヶ月間は少なくとも2週間おきの受診と血液検査を推奨しております。もしその受診期間中に熱が出るなどの症状が出たら必ず受診してください。
また、妊娠を考える場合は奇形の報告はない代わりに他の副作用が出やすい別の薬に変えるか、下記の放射線治療や手術で内服薬以外の治療を選択するかをあらかじめ行う必要があります。
甲状腺ホルモンはヨウ素という物質を材料に作られているため、ヨウ素に放射線を付与させた放射性ヨードという物質を投与することで甲状腺にピンポイントで放射線を集めるようにして、甲状腺ホルモンを作る場所を体内から破壊します。
準備に2〜3週間必要ですが、外来通院で治療でき、1回の治療で大半が完治します。
以下のような副作用があります。
甲状腺を手術で全部取ってしまうことで、甲状腺ホルモンを出す力を完全に失わせます。
バセドウ病は絶対に完治する(ホルモンが出せなくなるため)。
放射線療法とも少し被りますが、以下のものがあります。
当院では、日本甲状腺学会が出しているバセドウ病治療ガイドラインに沿って治療方法を提案します。
米国や欧州など外国では放射線療法が第一に選ばれている国もありますが、日本では内服治療で開始し、内服治療ができない人(薬で副作用が出てしまい内服治療が続けられない方など)は次の治療方法を選択することが多いです。
適切な治療を受け、甲状腺ホルモン量を基準範囲内に収めておけば、基本的に寿命が短くなったりすることはありませんし、甲状腺ホルモンが落ち着いたら日常生活に制限はありません(ただし発症したての機能亢進状態では心臓に負担がかかるため運動や仕事、通勤通学などを制限し安静にする必要があります)。
逆に治療を受けないと寿命がかなり縮まります。
バセドウ病は頻脈になるため、これを放置すると心房細動という不整脈を起こしてしまいます。これは頻脈が続くことで心臓が痙攣を起こすような感じになってしまい、非常にたくさん動いているのですが収縮して血液を送り出せなくなる状態です。
心臓は血液を送り出すポンプの役割をしているのですが、血液をしっかり送り出せないことで血液が循環できない心不全になったり、心臓の中に古い血液が溜まって血の塊を作ってしまい、それが脳の血管に飛んで詰まってしまう脳梗塞の原因になったりします。そのためバセドウ病と診断されたらしっかりと治療を受けないと、場合によっては命の危険に晒されてしまうのです。
内服治療を開始してしばらくしたらホルモン量も落ち着き、症状もなくなります。そうすると治ったと思ってしまい、自分の判断で病院受診を止めて内服治療を中断される方がいます。しかし急な内服中止は再発のリスクが高くなるため、自己判断は行わずに主治医の指示に従って治療を受けるようにしてください。
内服薬、放射性ヨウ素を用いるアイソトープ治療、手術があります。日本では抗甲状腺薬による治療から始めることが多く、甲状腺の状態、副作用、年齢、妊娠の希望などを踏まえて選びます。薬は甲状腺ホルモンが作られるのを抑える働きがあります。アイソトープ治療や手術では、治療後にホルモン補充が必要になることがあります。当院では状態に応じて治療を提案し、専門施設での治療が必要な場合はご紹介します。喫煙は甲状腺眼症にも関わるため、禁煙が大切です。
治療期間には個人差があり、数年単位となることもあります。血液検査で甲状腺ホルモンや抗体などを確認しながら薬を調整し、状態が安定すれば中止を検討できる場合があります。ただし、中止後に再発することもあるため、その後も定期的な確認が必要です。症状が改善しても、ご自身の判断で減量・中止せず、主治医と相談して進めてください。
抗甲状腺薬には、発疹やかゆみ、肝機能障害などの副作用があります。まれですが、感染から体を守る白血球の一種が著しく減る「無顆粒球症」にも注意が必要です。回復までの期間や必要な治療は状態によって異なります。当院では治療開始後の早い時期に定期的な採血を行い、副作用を確認します。高熱や強いのどの痛みなどがあれば、次の予約日を待たず、直ちに処方医療機関へ連絡してください。
抗甲状腺薬の服用中に発熱やのどの痛みが出た場合は、無顆粒球症などの副作用も考えられるため、次の予約日まで待たず、直ちに処方医療機関へ連絡してください。服用している薬の名前と症状を伝え、服薬・受診について指示を受けてください。連絡がつかない場合は救急医療機関へ相談し、抗甲状腺薬を服用していることを必ず伝えてください。治療開始から時間がたっていても、症状を放置しないことが大切です。
妊娠を希望する段階で、主治医へお伝えください。甲状腺の状態と薬の種類・量を確認し、妊娠前から治療方針を相談します。薬によって妊娠中の注意点は異なり、別の薬に変更すればリスクがなくなるわけではありません。妊娠が分かったときも自己判断で中止せず、速やかに連絡してください。アイソトープ治療は妊娠中に行えないため、必要な場合は妊娠の時期も含め専門医と計画します。
症状が落ち着いても、ご自身の判断で薬を中止しないでください。甲状腺ホルモンが正常になっても、病気の活動性が残っていることがあります。症状だけでなく、血液検査の結果やこれまでの経過をもとに、減量や中止の時期を判断します。中止できた場合も再発することがあるため、その後の定期的な確認が大切です。
必ず起こるものではありません。甲状腺を刺激する抗体が、眼球を動かす筋肉にも作用して炎症を起こすことで、筋肉が厚くなり眼球が前に出てくることがあります。まぶたの腫れ、目の乾き、見えづらさなどが先に現れることもあります。喫煙は目の症状を悪化させる要因として知られているため、禁煙が特に重要です。目の症状については眼科での評価や治療が必要になる場合がありますので、気になる変化があれば診察時にお知らせください。状態に応じて、適切な医療機関をご案内します。
アイソトープ治療は、放射性ヨウ素を利用して甲状腺ホルモンを作る働きを抑える治療です。効果の現れ方には個人差があり、追加治療や、その後の甲状腺ホルモン補充が必要になることがあります。手術では甲状腺の切除を行い、全摘術後はホルモン補充が必要です。入院や麻酔に加え、声やカルシウムの調整に関わる合併症なども含めて説明を受けます。いずれも専門施設で適応を判断し、当院から必要に応じてご紹介します。
はい、ご相談いただけます。バセドウ病は長期にわたって通院が続く病気ですので、通いやすさは治療を続けるうえで大切な条件です。当院は完全予約制で、平日は19時まで診療しており、駐車場も12台ご用意しています。転院をご希望の際は、現在の治療内容がわかるもの(紹介状、お薬手帳、直近の血液検査の結果など)をお持ちいただけると、これまでの経過を踏まえた診療がしやすくなります。紹介状がない場合もご相談ください。
治療開始直後は、副作用や薬の量を確認するため短い間隔での通院が必要です。当院の現行案内では、開始後3か月間は少なくとも2週間ごとの受診・採血を推奨しています。その後は甲状腺の状態、薬の種類、副作用の有無に応じて受診間隔を決めます。院内で測定できる検査は当日結果を説明できますが、項目によっては後日となります。具体的な次回受診日は診察時にお伝えします。

監修者
松尾 悠志(まつお ゆうじ)
松尾内科・糖尿病・内分泌クリニック 院長
専門領域:糖尿病、甲状腺疾患、内分泌疾患、肥満症、生活習慣病
藤田保健衛生大学(現:藤田医科大学)医学部医学科を卒業。藤田医科大学病院、豊田厚生病院、岡崎医療センターでの診療経験を経て、松尾内科・糖尿病・内分泌クリニックを開院しました。糖尿病・甲状腺疾患・内分泌疾患を中心に、将来の健康を見据えた予防医療に取り組んでいます。
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