糖尿病内科
糖尿病内科

糖尿病は血液中の血糖値が高い状態が続くことで、血液が濃くなり、血管を傷つけてしまう病気です。これが続き損傷と修復を繰り返すと血管が細く固くなり、詰まりやすくなってしまいます。高血糖が何ヶ月〜何年も続くと全身の血流が悪くなり、神経・網膜(眼)・腎臓が障害されてそれぞれ神経障害・失明・腎不全になったり、心筋梗塞や脳梗塞、足壊疽などの命に関わる病気になるリスクが上がったりします。
糖尿病は、血糖値が常時 300 mg/dLを超えるような重症高血糖の場合は別ですが、糖尿病単体で死ぬことはありません。しかし放置すると上に挙げたような健康を害する病気のリスクが上がり、寿命や健康寿命がそれぞれ10〜20年近く縮まります。糖尿病を治療する目的はこれらを防ぎ「長く健康で生きる」ことにあります。
糖尿病になっても自覚症状はないことが多いです。そのため放置されやすいのですが、危険な病気にならないよう予防をするためにも、治療を行うことが望ましいです。言い方を変えれば、寿命が短くなったり、人生が苦しくなるような症状ができるだけ起こらないようにするため、予防目的での治療が糖尿病を治療する目的です。
当院では、医師だけでなく看護師・栄養士・検査技師ら様々な職種の人と協力しながら治療を進めます。糖尿病の治療は食事療法、運動療法、薬物治療の三本柱全てが重要となりますので、必要に応じて栄養指導や糖尿病教育を受けていただきつつ治療を行います。また、近隣の病院とも協力しながら、合併症の精密検査や治療も必要に応じて行っていきます。
上で述べたように糖尿病は血管を細く固くする病気ですが、これは高血圧や脂質異常症、肥満症なども起こし、血管狭窄や硬化の原因となります。糖尿病にこれらが合併している場合は脳梗塞や心筋梗塞などの発症リスクがさらに上がってしまうため、併存する疾患を同時に治療開始して、リスクを徹底的に下げていきます。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の2種類があります。血糖値を低下させるインスリンというホルモンが膵臓から分泌されているのですが、糖尿病はこのインスリンが足りないために起こってしまう病気です。1型糖尿病はインスリンを作る場所を破壊してしまう免疫細胞ができてしまうことで発症します。2型糖尿病は遺伝、年齢、食生活や運動習慣などの生活習慣などによってインスリンを作る力が落ちてしまうために発症します。
血糖値は食事の前後や時間帯などによって大きく変動します。そのため糖尿病の診断のためには、採血を行った瞬間の血液中の糖分量を調べる血糖値と、上下動する血糖値の1〜2ヶ月間の平均値であるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)を測定し、この両方が高かった場合に糖尿病と診断します。

血糖値を変動させる要素は大きく分けて3つあります。
この上下動は通常プラスマイナスゼロになるようになっていますが、何らかの原因で下げきれなくなると血糖値が高いままになってしまいます。これが高血糖の状態です。

一般的に糖尿病というと、たくさん食べて全く動かない②のタイプが想像されます。この場合は膵臓がどれだけ頑張ってインスリンを出しても血糖値を下げきれなくなります。ですが日本人はこのタイプは少ないです。アジア人は膵臓の力が弱く、白人の4分の1程度しかないと言われており、膵臓が早く疲弊してインスリンを出せなくなってしまいます。これが糖尿病の家族歴がある人や高齢者に多いタイプ(③)で、暴飲暴食していないのに糖尿病になってしまうのです。
糖尿病では血糖値が高いことで血管にダメージが与えられ、傷の修復過程で血管が細く硬くなり、詰まりやすくなります。特に元々細い血管が詰まりやすくなり、目・足先・腎臓などに合併症が出やすく、これらを「細小血管障害」と呼んでいます。逆に元々太くて詰まりにくく、詰まってしまうと命に関わる血管が閉塞して起こるものを「大血管障害」と呼び、脳梗塞・心筋梗塞や狭心症・足壊疽などがあります。

糖尿病は失明の原因の3位、透析の原因の2位になっています。大血管障害も糖尿病がない人に比べ発症リスクを2〜3倍に上げるため、高血糖の放置は非常に危険です。

治療は食事療法・運動療法・薬物治療の全てが重要です。血糖値が上がる原因のところで、上昇する血糖値を抑える治療が食事療法(オレンジ)、運動して下げる治療が運動療法(緑)、インスリン分泌量の低下を補う治療が薬物治療(青)となります。
食事の量と内容、両方が重要です。身長や日々の活動量から適正な摂取カロリーを計算し、炭水化物・タンパク質・脂質の3種類の栄養素や塩分摂取量を年齢や合併症に応じて設定します。当院では栄養士の先生との面談を通じ、適切な食事を現在の食事の改善点も含め教えてもらい、治療を進めていきます。
運動を行うことは、糖尿病や高血圧、脂質異常症の改善につながるだけでなく、合併症の発症リスクが下がると言われています。

運動療法と聞くと、「運動着に着替えて、ジムに行って1時間以上運動して」などの気合を入れてスポーツをイメージされる人も多いと思います。しかしWHO(世界保健機構)や厚生労働省が策定している運動の定義は、
とされています。この40〜60分は連続して運動し続ける必要はなく、1日の中で分割しても構いません。例えば、通勤に片道20分を往復歩き、昼食後に20分歩くと、1日合計60分の歩行を達成できます。このように運動療法は日常生活の中でも行えます。もちろん筋トレなども含めてしっかりとした運動を毎日行うことが理想ですが、一番重要なことは長続きすることです。そのためにはハードルをできる限り下げ、気負うことなく達成できるようにすることが望ましいです。
糖尿病の薬物治療は、肥満症が合併しているかどうかで変わります。糖尿病の薬と聞くとインスリン注射を思い浮かべる人も多いと思いますが、これは自分で打たないといけないこと以外にも障壁となることがあります。それが「インスリンを打つと太る」という副作用です。糖尿病の方は多かれ少なかれインスリン分泌が低下していたり、インスリンの効き目が悪くなったりしています。食べて消化された糖質(炭水化物)は小腸で吸収され、血液の中に入って身体中に運ばれます。これが血糖で身体中の細胞に運ばれるのですが、血管から細胞の中に移って入るには、細胞膜にある糖分を搬入する出入り口の扉を開けないと入れません。
この扉を開ける鍵になるのがインスリンです。血糖値が上がると膵臓が感知しインスリンを出します。すると細胞膜の扉が開き、血管から細胞に糖が移ります。それによって血液中の糖(血糖)は少なくなり、細胞内に栄養が届くのです。

インスリンが膵臓から分泌されたり、インスリンの注射を打ったりすると、絶対に血液中の糖分量は減ります。これはインスリンが血糖を消滅させる魔法の物質だからではなく、細胞に移動させていくから下がるのです。それによって細胞に栄養が行き渡るため太ります。どんどん食べてどんどんインスリンを注射すると、血糖値は低くなっても太ってしまいます。
糖尿病の内服薬の中には、インスリンの分泌量を増やす薬もあります。このような薬を使用すると、血糖値は下がっても太ってしまいます。痩せ型の人はこのような薬を使用してもいいのですが、肥満症がある人にインスリンを含めて太りやすくなる薬を使用してしまうと、血糖値が下がっても体重が増え、結果的に健康に悪影響を与えてしまうこともあるのです。ですから肥満症と糖尿病を合併している患者様には、体重を落とす薬を優先して使用します。
このように糖尿病の薬物療法は、患者様の年齢や体型、合併症に応じて個別に治療方針を決定していきます。
お腹の中の赤ちゃんは、自分ではご飯を食べることはできないため、栄養は全部お母さんからもらっています。お母さんの子宮の中に赤ちゃんはいるのですが、お母さんと赤ちゃんは「胎盤」を通して繋がっています。お母さんの血液が胎盤を通して赤ちゃんに与えられ、赤ちゃんの血液が胎盤を通してお母さんに帰っていきます。赤ちゃんを育てる栄養は、お母さんの血液の中に溶けた糖分、つまり血糖です。
そのため胎盤としては「赤ちゃんを育てる栄養が欲しい!血糖値を上げてくれー!」とお願いするホルモンが分泌され、どんな人であっても血糖値は多かれ少なかれ上昇します。これが、妊娠糖尿病です。
よく「糖尿病って食べ過ぎの人がなる病気でしょ!?」と思われがちなのですが、妊娠糖尿病とは赤ちゃんがお腹の中にいるために起こる状態です。言い方を変えれば赤ちゃんをしっかり育てるために起こってくる状態です。あなたは決して悪くありません!色々不安だとは思いますが、このことだけは妊娠中は覚えておいてください。
妊娠糖尿病は大きく分けて4種類あります。
1. 妊娠糖尿病
妊娠前には糖尿病はなかったけど、妊娠してから血糖値が高いねと言われた。
2. 妊娠中の
明らかな糖尿病
妊娠前はあまり健診とかを受けていなくて糖尿病があるかどうか分からないけど、妊娠したらすごく血糖値が高いと言われた。
3. 糖尿病合併妊娠
もともと糖尿病と言われていて、今回妊娠が分かった。
4. 劇症1型糖尿病
妊娠とは全く無関係に、妊娠と同時に偶然糖尿病になってしまった。
この4種類です。3.の人はこれまでも検査を受けていると思うのですが、それ以外の人はどれに当てはまるかは検査で調べる必要があります。それが、「採血検査」と、必要に応じて行う精密検査である「75gブドウ糖負荷試験」です。これを行い、それぞれに応じて治療を行っていきます。
「糖尿病っていう言葉はよく聞くけれど、妊娠糖尿病っていうのはあまり聞かないしよく分からない」という方が大半だと思います。最初にお伝えしたように、妊娠したら血糖値が上がりやすくなるのは赤ちゃんを育てるためです。そのこと自体は問題ないのですが、でも血糖値が高すぎると色々と問題が起こってきます。
| お母さんの合併症 | 赤ちゃんの合併症 |
|---|---|
|
1) 糖尿病の合併症
2) 産科合併症
|
1) 周産期合併症
2) 成長期合併症
|
国立国際医療研究センター
糖尿病情報センター より
色々と聞き慣れない言葉や怖い言葉が並んでいますので簡単に言うと、
お母さんの血糖値が高い
赤ちゃんに栄養がたくさんいく
赤ちゃんが大きくなりすぎる
色々問題が出てくる
こんな感じになります。つまり、赤ちゃんを育てるためにはしっかり食べて栄養を摂らないといけないんだけれど、血糖値が高すぎると赤ちゃんが大きくなりすぎる、ということになります。
また、赤ちゃんが高血糖状態で数ヶ月間育つと、その状態が普通と思って成長していくため、たくさんの血糖が入ってきているので、赤ちゃんの膵臓は血糖値を下げるインスリンを普通以上にたくさん体の中で作ります。そんな状態でお母さんのお腹の中から出て、臍帯(へその緒)を切って、お母さんから多くの血糖をもらわなくなったら、それまではたくさんの血糖が入ってきてたけどそれが入ってこなくなり、でもインスリンをたくさん作るのは急に止められないから、血糖値が下がりすぎてしまいます。これが周産期合併症を引き起こす原因となります。
周産期合併症を防ぐには、血糖値をしっかりコントロールすることしかありません。
| 日本糖尿病学会 | 日本産科婦人科学会 | |
|---|---|---|
| 空腹時血糖 | 70〜100 | 95以下 |
| 食前血糖 | 100以下 | |
| 食事2時間後血糖 | 120未満 | 120以下 |
| HbA1c(採血結果) | 6.2未満 | 6.2以下 |
色々難しい書き方をしてますが、要点を抜き出すと下の2つが大事な治療目標です。
| 食前血糖(食事を食べる前の血糖値) | 100未満 |
|---|---|
| 食後2時間値(食事を食べ始めてから2時間後の血糖値) | 120未満 |
もちろん出産までの10ヶ月間ずっと正常範囲内に収めることは不可能です。どんな人であってもできません。重要なことは、血糖値が高い状況をできるだけ防ぐことです。100点満点のコントロールはできません。たとえできたとしても、多くの場合はすごくストレスが多くなったりとか、食事量を極端に減らしたりとか、とても負担になる可能性があります。
もちろん高すぎるのは良くありませんが、血糖値のことばかりをあまり気にしすぎて負担に感じる必要もありません。どうしても妊娠中はお母さんにとって心身共にストレスがたまります。そこに妊娠糖尿病があると、さらに心が疲れやすくなりがちです。家事でも「お掃除完璧にした!でも食事の用意全然できてない!」ってなったら大変ですよね。妊娠中も同じです。血糖値で100点を目指したためにそのほかのことに影響が出てもいけません。難しいですが、妊娠糖尿病もその他のこともバランスよくやって、せっかくのマタニティライフを充実した楽しいものにしてください。
糖尿病の治療は3本柱があります。
この3つなのですが、妊婦さんにとって激しい運動は無理ですので、
まずは食事療法!
↓
それでダメならお薬使う!
この順番でやることになります。つわりがある時期とかは食事が食べられないことも多いですが、つわりが治まったらすごくお腹が空くようになります。逆に妊娠週数が進んで子宮が大きくなってくると、子宮が胃腸を圧迫してたくさん食事を食べられなくなる人もいます。そのため一言で食事療法と言っても、妊娠の時期やその人の体格などでどんどん変わってきます。
でも重要なことは、血糖値が気になるからと言って食べる量を減らしすぎると、赤ちゃんに栄養がいかなくなることです。血糖値は確かに気になりますが、でも食べ過ぎない程度にしっかりと食事を食べてもらう必要があります。それで血糖値が高い状態が続くなら、インスリン注射を行って血糖値を下げることになります。糖尿病の内服薬(飲み薬)は、赤ちゃんに影響が出る可能性があるため使えません。妊娠糖尿病の人が使えるお薬は、もともと人間の体で作られているものと同じ成分のインスリンしかないのです。
インスリンと聞くと、「自分で自分に針を刺して注射をしないといけないためすごく大変!怖い!」と皆様思われます。気持ちはすごく分かります。ですが、赤ちゃんを守るため、また自分の身を守るためにも、必要であるならばインスリン注射をしていただかなければなりません。この辺りについては、妊娠週数ですとか血糖値の値とかで変わってきますので、診察の際にお話しさせていただきます。
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